Key最新作『anemoi』をクリアした。
とにかく気分が重い(クリア直後その場から動けなくなり、2時間ほど無言で打ちひしがれていた)が気分を紛らわすため、ネタバレ有で感想を書いていく。
10年前に埋めたタイムカプセルを開ける日が近づいていた。
主人公の速川 麦は、妹の六花とともにふたりで北の地、真澄町へ訪れる。
都会の喧噪を忘れさせてくれる町は、強く吹く風の中でゆっくりとした時間が流れていた。
大きな風車の恩恵を受けながら、経験と知恵と人のつながりで築かれる生活。
約束の時間まで、麦は人々と交流を重ねながら町でスローライフを送ることにする。
総評
また心に傷をつけられた。いい作品だった。
毎度のことながらBGMのクオリティは群を抜いていて、キャラクターの立ち絵からイベントスチルまで何から何までが高品質なのも評価点。
でもなんで全クリしたのに立ち絵鑑賞機能無いんですか?おかしくないっすか?
下記、プレイした順でメインヒロインルートの感想とグランドエンディングルートの感想を書いていく。ネタバレ有。
あとただの感想なのでどのキャラがどういうキャラかとかそういう説明は結構省かれている。
淡雪ルート
淡雪というキャラクターはエネルギー生命体、かつ群体、そして平行宇宙を渡り歩ける、というかなり異質なキャラクターだが、そんな淡雪のキャラ特性を十二分に生かした、長大ながらもまとまりのあるいいシナリオだった。
ちゃんと選択肢でいろんな可能性を提示して、それでいて最良の選択肢にプレイヤーを誘導させることができていたのもよかったね。
愛乃ルート
ちょっとひどかった。
クリア直後キレすぎてやってない友人をDiscordに呼びつけて、ネタバレを避けた曖昧な批判をして溜飲を下げていた記憶がある。
恋愛関係が薄いままヒロイン消失イベントに突入してしまったことが何よりの問題点で、その先の展開がどうしても薄味になってしまった。要は上げて落とす、の泣きゲーの基本形において、上げて、の部分がショボかったのが悪い。
キャラクターは第一印象でかなり好きだったため、非常に残念。
愛乃は非常に可愛い。
スピカルート
愛乃ルートとは打って変わって、シナリオ構成が基本に忠実で外すところを外さない、美しい出来だった。
孤独な旅を続けていた二人が共同体に包摂されていく、危機的状況において周囲を頼ることで打開策を見出す、ってところは、Summer Pocketsのしろはルートに近似するところがあった。
スピカが可愛い。
小詠ルート
これはヒロイン個別ルートの中では最高の出来。
実はこの作品はポストアポカリプスものであり、ガンマ線バーストによる大災害が(作品開始時点の)10年前に起きている、という設定。
この設定を作ることによるメリットは、下記があげられる。
- 文明レベルを後退させたことで、SNSに代表される現代的な人間関係を排除し、対面コミュニケーションを主体とした濃密な人間関係や、不便さによるノスタルジアを演出できる
- グローバル社会を崩壊させたことで、社会の単位を「国」や「州」などといったものから「町」という小さい単位に絞り込め、共同体の結びつきを強固にできる
- etc
こうして見ると、一見、この設定はこのような都合のいい舞台を作り上げるためのものなのではないか、とうがった見方もできるが、
小詠ルートでは、この災害に対して、ただの設定ではなく、作中の現実で起こった大事件として真っ向から向き合うことができていた。
当然、勇美さんとピリカの物語として読んでもかなりの面白さだが、「災害」を真っ向から描き出す視点があったことに深く感動したルートだった。
六花ルート
正直あまり響くルートではなかった。
最後にやったんだけど、ヒロインがどいつもこいつも人外すぎて食傷気味になっていたのがある。Summer Pocketsでも初期4人中2人は普通の人間(一人は呪いの血を引いているものの)だったので、いくらなんでも……。
麦くんの内面を、兄妹愛を通し、第三者的な視点で描いていたルートであり、個別ルートの中では、最後にプレイすることが想定されているようなルートであるように思えた。
グランドエンディングに向けて、ここで麦くんの内面を深掘りしたのは良かった。麦くんが六花にささげた愛情の重さこそが、グランドエンディングでの説得力につながっていたと思う。
eternicle
グランドエンディングルート前編。時系列的にはスピカルートの続き。
このルートは最高。
最初、スピカの視点でスピカ個別ルートのおさらいをして、スピカの内心を描くことでスピカがどういう人物か、というのを改めてプレイヤーに理解させていた。物語への没入度や解像度を上げるという点で非常に効果的だったと思う。
何よりもショタコンお姉さんでデロ甘なスピカを見れるのが嬉しかった。
プロポーズOKするときのスピカなんか、衝撃的にかわいすぎて大きな声が出た。
スピカ個別以降は麦くんの視点に戻って甘い恋人生活もとい夫婦生活が描かれるが、それもかなり濃密かつ見たことないくらいイチャついてて読んでて非常に楽しかった。
そして、ついに描かれるセックス!
Summer Pocketsの紬ルートでも愚痴っていたが、セックスは恋人の物語を描く以上絶対に必要だと思っていて、精神的なつながりはもちろん、肉体の欲望はお互いがどれだけお互いを強く求めているかを最も端的かつ効果的に表現できる手段だから。
それをちゃんと描いてくれたことがすごく嬉しかったし、涙が出た。濡れ場で……。
また、出産シーンすらも克明に描かれていて、この作品はファンタジー世界にあってもそこに息づく人々の、地に足の着いた現実を描くところに美しさがあると思った(小詠ルートでも強く思ったこと)。
ただ、これらはすべてスピカの消失という大いなる不幸の前振りであって、読んでいる最中もそれがわかっていたから、幸せな物語にもかかわらず苦しみながら読んでいたところがある。こういう話は書かないでください。
ただそのスピカの消失イベントがちょっと急転直下すぎて、もう少し丁寧に不幸に突き落とせた感じはあったが(当然示唆が全くないわけではなくて、玖琉未の不審さ自体がその示唆ではあった)。
それでも、最後までスピカが麦くんと共に戦う姿勢を見せたのは良かった。
anemoi / arrive
最初読み終わった時、ダメージデカすぎて、この記事の冒頭でも書いてるけどマジで2時間くらい動けなかった。頭の中で『辿り道』がずっとループしていた。
良くも悪くも、俺に大ダメージを与えてくれる作品を作ってくれるのはこのメーカーくらい。ちゃんと感情移入させてくれる感がある。
穂乃夏という、スピカと麦くんの娘の成長記録が大部分を占めるこのパート。
まず感動したのは、やっと、ようやっと良好な父子関係を描くことができたんですねという点。
最愛のスピカを失った(失ったわけではないけど)にもかかわらず、娘を守ることこそが俺の使命だ、と、悲嘆に暮れることなく、自分を奮い立たせることができたのは本当に強い男だった。羽依里くんは反省しなさい。
まあ羽依里くんを擁護すると、しろはの場合はマジで死んでて生きてる希望もなかったからってのはあったかもね。
でも速川麦くんの人生って辛すぎる……。
幼少期に親を亡くし、妹すら眼前で亡くし、すべてを失った彼は化物に妹の名を与えて、それを本当の妹だと思い込もうとしながら共に旅をし、最終的にはその妹の名を背負った化物は風と去り……
旅の終着点で、運命的な再会を果たした最愛の人と結婚し、娘を儲けた矢先、その最愛の妻を失い……
ひとり親として育てた娘も、母親を探すために旅に赴き、一人ぼっちになってしまった麦くんは妻と娘を待ちながら60年以上ピザを焼き続け……
死ぬ間際に幸福な夢を見て、旅立っていく……
これを悲劇と呼ばずして何を悲劇と呼ぶ?
正直、Summer Pockets RBと比べても筋が通っていて話としては非常に美しい。
でも切なすぎる。
とはいえ、グランドエンディングムービーを見る限り、最終的には速川家3人は風の中で一緒になったことが描かれているわけだから、別にバッドエンドというわけではないと思う。
さっきの麦くんの人生についても、最後に幸せな夢を見たんじゃなくてカレイドワールドで本当に再会できた、が正しい表現だしね。
麦くんの視点で言えば「俺の人生は幸せだった」と述懐しているのでまあハッピーエンドという見方もできなくはない。ちょっと厳しいだろ、納得できねえよ、とは思うが。
まだこの辺は咀嚼しきれていないので、もうちょっと時間をかけて自分の中に落とし込みたいところ。
終わりに
まだ結構しんどい。終わり方はともかく、GW中かなり楽しんでプレイしたのもある。
VAさんも流行りに乗ってスピカのASMR出してください。
(了)




